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ノルウェー雑感

 

関門港湾建設(株) 山根敬

 

わずか4日間足らずの滞在で、技術的な調査をかかえての旅では、とても人々の生活に触れることは出来ませんでしたが、それでもそれなりにいろいろな話を聞くことは出来ました。聞き違いや間違いもあると思いますか、聞いた話や感じたことを、思いつくままに述べてみます。
ノルウェーは、国土全体が岩盤の上に乗っているような感じの国です。日本と同じように、平地が少なく、山や丘陵ばかりです。地震はないそうです。私達が見た地域は木もあまりなく、淡い緑の牧草地帯が多くて、畑らしいものも殆どありませんでした。林業が盛んだということですから森林はあるのだと思いますが、穀物や果物、野菜等は全くとれないだろうと思います。海岸は特有のフィヨルド地形で標高数百メートルの台地が殆ど垂直に近い岩壁を経ていきなり数百メートルの水深の入江の海になっています。
日本よりちょっと大きい面積の国土に、人口は僅か430万人です。首都オスロの人口は約40万人ですが、朝晩は交通渋滞もひどいとのことです。
ノルウェーの街を歩いて先ず印象付けられたのは大変清潔なことでした。どこへ行ってもゴミがないのです。吸いがら一つ、紙屑ひとつ落ちていません。道も、店も、船着場も、駅も列車の中もみんな清潔な感じです。それでも夜の街ではいくつかの紙屑を見ましたので深夜にでも掃除をするのかもしれません。早朝のゴミ一つない道の散歩は大変快適でありました。
ノルウェーでの訪問先は役所を含めて数カ所に過ぎず、沢山の人に会ったわけではありませんが、会っていただいたすべての人がみんな終始謙虚な態度で一生懸命説明して下さいました。皆さん礼儀正しく奥ゆかしい人々であったと思います。
ノルウェー人の平均的な年収は日本円換算で200万円くらいだそうで、夫婦共稼ぎが一般的だそうです。社会保障が充実しているので、貯金もあまりしないようですが、物価は日本並の感じなので、生活は決してらくではないようです。自動車は全部輸入品で関税が100%ですから価格は倍です。それに産油国でありながら、ガソリンはリッター160円など、税金の高いことにも驚かされます。安いものでは電気料があります。kwh当たり6円位だそうで、水力発電が主体ですが、その年の降雪量によって料金が2〜30%上下するシステムになっているそうです。暖房は電気が主体となっていますが、停電すれば命に拘わるので、薪や石油の暖房設備を備えることが、法律で義務ずけられているそうです。半分以上の人が別荘を持ち、30%位の人がプレジャーボートを持っているとのことですから、我々とは大分環境も異なり、価値観も違うように思います。
老後は子供の世話にならないし、子供は親の面倒を見ないというのも、きちんとした考えに基づいており、厚い社会保障、高い負担、高物価という形でうまくバランスをとってこの社会を維持しているように感じました。我が国も、人まねでなく、自分達のおかれた環境や、自分達の価値観に基ずいて、今後の社会のあり方を考えなければならないと思いました。今や石油の輸出では世界第3位になったこの国は、人口430万人の小さな国ですから、うまくゆけば、大変に豊かな社会になるのではないでしょうか。
ベルゲンは古くからの港で中世にはこの国の首都であった街ですが、今はフィヨルド観光の拠点にもなっています。大変美しい街です。どの一角をとっても絵になる感じです。北国の淡い緑に、色とりどりの屋根の色が映えて、まるで童話の世界に出てくるような美しい街並みです。聞けば家の外観を変えるのには市の許可が要るとのことです。

 

 

 

 

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